ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

『メロンパンの真実』


東嶋和子『メロンパンの真実講談社(リンク先は楽天ブックス 文庫版)、2004年初版で税別1600円だったもの。

 図書館で借りてきた。自転車ですっころんで大腿骨骨折をした著者の母親(糖尿持ち)が、修行者のような入院生活を終えて帰宅したとたん、台所でこっそりメロンパンを食べていたという話から始まっている。メロンパンのルーツを探る本だが、明治以降のパンの歴史も詳しい。後半は関西のマクワウリ型のメロンパンと、サンライズ(関東のメロンパン)について追求している。「トリビアの泉」で金の脳の中に入っているメロンパンがどこのものか気になってフジテレビに電話するなど、大変面白い。なお、金の脳に入っているパンは、どこか決まった店のものではないが、お台場周辺のパン屋からよい形のものを選んでスタッフが買っているとのこと。コンビニ製品ではないということだ。


◎メロンパンについての抜き書き

  • メロンパン好きの有名人
    • 小川直也「セブン・イレブンの焼きたてが好きで、よく自分でも買いに行くよ。一度に買うのは三個。太るから一個しかたべないけど、目の前に三個あるだけで幸せな気分になれるんだ。(中略)いまの自分にとって唯一の"反則"はメロンパンくらいだね」週間ポスト2000年1月28日号
    • 五木寛之:1970年4月〜毎日新聞日曜版のコラム「ゴキブリのうた」でメロンパン好きを告白。将来、小説が書けなくなったらメロンパン評論家として再スタートすべきとまで言っている。吉行淳之介から「君のあれ、なかなか面白かったぞ。最近のものの中じゃいちばん面白かった」と言われ、どの小説かと思ったらメロンパンのコラムだったのでガッカリしたというエピソードも。
    • 徳光一夫:一説によれば彼がメロンパン好きで福顔であることから、メロンパンを福の神として鞄に入れて持ち歩く流行が生まれたとされる。
  • メロンパンのおまじない
    • 1998年ごろ、メロンパンで幸せになれるという噂が流れていた。中高生が通学鞄にメロンパンを入れて歩いた。「好きな子を思って食べれば両思いになれる」「食べてしまうと願いは叶わないのでずっと入れておく」など、さまざまな流派があった。徳光一夫アナウンサーがメロンパン好きで福顔であることから、メロンパン福の神説がうまれたとする説もある。
  • 名前の由来
    • 表面のビスケット生地のひび割れがマスクメロンの皮を思わせるから。(パンが先)
    • 庶民には手の届かない高級なマスクメロンに形を似せて作ったから。(メロンが先)
    • ビスケット生地にはメレンゲを使うため、メレンゲ→メロンと訛った。
  • 関西のメロンパン
    • マクワウリ型の菓子パンで中に白あんが入っている。>参考
      • 白あんにメロンシロップで味をつけたことからメロンパンと呼ばれたとの説あり。
      • マクワウリ型なのは、チキンライスの型にはめて整形するから。
    • 関東風の丸いメロンパンのことはサンライズ、もしくはサンライスと呼んでいる。
  • メロンパンの起源
    • 帝国ホテル第十一代料理長村上信夫氏によれば、昭和九年当時、風越堂というパン屋にはメロンパンがあった。フランスのガレットがよく似ており起源かもしれないとのこと。
    • 神田錦町のパン屋(現・銀座の木村屋)で働いていた職人・三代川菊次(みよかわきくじ)がビス生地とロールパン生地を合体させたパンを考案して、昭和五年か六年に実用新案出願公告第九三四号・実用新案登録番号154057号として認められている。この頃はパン生地に珈琲やバナナなどを混ぜ、メロンパンとも呼ばれていない。木村屋には記録はないとのことだが実用新案自体は実在している(著者が特許庁にのりこんで調べた)。
      • 著者は実用新案出願者の住所をたずね、昔から住んでいる人に当時のことを聞くが、出願者の消息はわからない。少なくとも昭和の初期に存在していたパン屋の名前は木村屋ではなかったとのこと。
    • パン洋菓子研究家島津睦子「メロンパンはオーストリアのウィーン生まれ。あの表面の固いビスケット生地はモカ風味だった」「ウィーンにはカプチーナロールという名のメロンパンに形が良く似た珈琲味のものがある」しかし、メロンパン・ウィーン生まれ説は伝聞であるとのこと。カプチーナロールはドイツ語ではない。
    • ドイツでメロンパンに似たものはストロイゼルクーヘン Sterusel Kuchen と呼ばれており、バター、砂糖、小麦粉を混ぜ合わせてソボロ状にしたストロイゼルをパン生地にふりかけて焼いたもの。
    • ワールドホップスという、パン・洋菓子原料の製造販売を行う会社の梅澤八郎氏によれば、昭和二年に入所したパン屋(店名不明)には、すでにメロンパンが存在しており、東京中のパン屋に普通にあったという。
    • スペイン・ポルトガルにはパンデ・ウェボス(卵パン)と呼ばれるパンがある。メキシコにもコンチャ(貝)と呼ばれる貝殻型のパンがある。どちらも、パン生地にビスケット生地をかけるパンだという。第一次世界大戦後にアメリカから戻ってきた日本人のパン職人がコロネパンなどを次々に考案する。彼らが南米のコンチャをもとにメロンパンを作ったかもしれない。

 
# まとめ
説1>第一次世界大戦で捕虜になったドイツ兵が大正末期に日本に伝えたストロイゼルクーヘンから生まれた。最初は珈琲味で、後にビスキー生地にレモン風味をくわえてメロンパンと呼ばれるようになったのではないか?
説2>スペインから南米に伝わったコンチャというパンがもとで、第一次世界大戦後にアメリカから帰国した日本人パン職人がメロンパンとして日本に広めたのではないか?


◎その他抜き書き

  • 日本最初のパン屋
    • 万延元年(1860年)内海兵吉が横浜に開業したのが最初といわれる。
  • ウチキパン(宇千喜パン):現存する日本最古のパン屋?
    • 文久三年(1963年)にフランス人のクラークが横浜ベーカリーを開業する。彼がフランスへ帰ることになり、明治二十一年(1888年)に打木彦太郎が店を引き継ぎ、ウチキパンと改める。

http://www.uchikipan.com/

  • バイキング
    • 帝国ホテルで1958年(昭和三十三年)にインペリアルバイキングという北欧料理のレストランが開店した。このとき帝国ホテル第十一代料理長である村上信夫が考え出したのが、自分で選んで好きなだけ食べる「バイキング料理」だった。