ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

一角:ウニコール(参考『本草綱目啓蒙』)

 『本草綱目』には蛇角の名で出ているらしい。これがイッカクという鯨の仲間の前歯であることは現代ではその道の者ならば誰でも知っていることだが、日本にも中国にもこの生き物はおらず、ただ異国から角だけがもたらされるのを見て獣角とされた時代もあり、竜角とされたこともあり、大蛇の角とされたこともあった。宝暦三年(1753年)に中国から来たウニコールには竜角と記されていたということである。江戸時代後期にはすでに魚角であるとされていた。当時は鯨も魚の一種であるから、この説はもっとも真実に近い。グルーランド(グリーンランドか?)の魚の角で、長さ八、九尺(240-270cm)、表面に斜紋があり中に空洞がある。偽物が多く出回っているが、鯨の歯を薄く斜めに切って斜紋を刻んだものだという。
 蘭山は蛇角をウニコールとし、ラテン語のウニス・コルニユ(一・角)の転訛だと言っている。また紅毛語(オランダ語)でヱーン・ボールン(一・角)とも書いているから、この時代の日本には中国経由ではなくオランダ渡りのイッカクの歯が持ち込まれていたということだろうか。あるいはなんらかの書物からの引用かもしれないが。
 ウニコールを獣角とするのは、インドに独角獣がいるという話から来ているのではないかと蘭山は言っている。独角獣は馬のようで巨大、頭に角があり、これで器を作ればあらゆる毒を消すと言われている。おそらくサイのことを言っているのだろう。