19世紀イギリスの粗悪な食品
アーサー・ヒル・ハッサルは19世紀に活躍したイギリスの医師です。彼はロンドンの複数の商店でコーヒーを買って帰り、顕微鏡や化学分析にかけて調べたところ、そのほとんどがチコリの根や小麦、ライ麦、豆、エンドウ豆を焙煎して作った偽物だったということです。それらがまったく虚偽の説明書きをつけて売られていたとのこと。
また、当時ブラウンシュガーと言われていた砂糖を調ると、砂糖自体には混ぜ物はありませんでしたが、サトウダニと呼ばれる小さな虫の卵、生体、死体などがおびただしい数含まれていたと言います。
コーヒーや砂糖のみならず、牛乳は水でかさましされていたし、パンには粗悪な小麦粉が使われていたため見栄えと食感をよくするために大量の明礬(みょうばん)が混ぜられていたとも言います。唐辛子には亜鉛や煉瓦くずに似た鉄分を含む土が混ざっているし、食用酢には酢と呼べるものはほとんど入っておらず、少量の麦芽と大量の硫酸で作られていたそうです。
また、マーマレードとジャムの原料は果物ではなくカブで、ココアの多くはトウモロコシ粉やタピオカだったということです(タピオカのほうが安かったのか!)。お茶には陶土や米が混ぜられ、黒ビールにはストリキニーネと硫酸が混ざっていたそうです。
フォートナム・アンド・メイソン(ロンドンの高級百貨店)ですらアンチョビーを赤土で染め、西洋スモモのジャムを銅を使って鮮やかに染めていたそうです。カレー粉で有名なC&Bでさえ粗悪な魚に色のついた粘土を加えてアンチョビと偽って売っていたといいます。
まるで現代のどっかの国の話みたいですが、イギリスですらかつてはこんな様子だったようです。
出典は『医学探偵ジョン・スノウ』