ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

西新井ってどこの西?

 東京には新井薬師がある。そして、西新井大師もある。どちらもお寺だが、まったく場所が違う。新井薬師は中野区だし、西新井大師は足立区だ。そもそも、薬師は仏様だけど、大師はお坊さんだ(故人だし弘法大師レベルなら仏様と言っても過言じゃないだろうけど)。とにかく全然違う。なのに都内に住んでいてもごっちゃにしている人がいる。わたしの知人は中野区在住なのに「このあたりで厄払いと言ったら西新井大師かしら」なんて口走る。中野区からだと23区を横断しなきゃたどり着かない。また、西新井"薬師"にお参りに行こうなんてことを言う葛飾区民も知っている(葛飾は足立区の隣にあるのでほぼ地元)。

 とはいえ、こんなに名前が似ていると、対(つい)になっているんじゃないかと思うのが人情だ。けれど、このふたつのお寺がペアでもなんでもないことは場所を見るとわかる。新井薬師は中野区。つまり東京の西側にあって、西新井大師は足立区、東京の東側にある。通常、西だの東だのついているものは、無印のものから見て西や東にあるものだ。ところが新井薬師から見て東の方角に西新井大師があるのはおかしい。だからこれらの寺は無関係なのである。

 じゃあ、なぜ西新井大師は西なのか。西新井があるならすぐ近くに新井もあるのか?

 ノーである。西新井のまわりには新井という地名はないらしい。そもそも、西新井という地名は西新井大師があるから西新井なのであって、御大師様が先で、地名はあとからつけられたそうだ。

 じゃあ、新井とはなんなのか。西とは一体なんなのか。それには西新井大師にまつわる伝説が関係している。

西新井大師の公式サイト
http://www.nishiaraidaishi.or.jp/jp/daishi/index.html

 ここによれば、弘法大師がこの地にたちよった時、人々が病に苦しんでいるのを見て、十一面観音を作り祈願した。するとお堂の西側にあった涸れ井戸からこんこんと水がわきだしたというのである。これが西新井という地名の由来になった、と。そういうわけで、足立区には新井という地名はないのに西新井という地名が存在することになった。



 じゃあ、中野区の新井薬師の由来はというと、これまた新しい井戸を掘ったことに由来しているそうで、新井にお寺をつくったお坊さんもよい水が出ることを理由にこの場所を選んだらしい。

新井薬師の公式サイト
http://www.araiyakushi.or.jp/p02.htm

 どちらも井戸がらみなので余計にややこしいが、東京の西には新井薬師があり、東には西新井大師がある。