扶桑と竹とココヤシの木
門松には竹も欠かせません。むしろ立派な門松ほど竹が主役です。そこで思いついたのですが、門松は扶桑と関係があるんじゃないでしょうか。扶桑は天までとどく桑の木ですが、しばしば枝がないとも伝えられるのです。竹には枝がありますが、樹木のように太い枝ではありませんし、幹だけが天を目指してニョキニョキ伸びるイメージなんだと思います。
そこでさらに思い出したのはニューギニアの伝説です。手元にかなり断片的なメモしか残っていませんが、だいたいこんな感じです。
世界のはじまりの時、最初に現れた女神はバナナを膣に差し込んで男の子と女の子を産みました。男の子は間もなく何かの理由で(ここはメモに残ってない)死んでしまい、その頭蓋骨からココヤシの木が生えてきます。
女の子がココヤシの根元に腰掛けていると、ヤシの木が女の子を抱え込んで急にどんどん伸びていき、てっぺんがどこにあるかさえわからないほど高くなってしまいました。そこで女神は動物たちを呼びあつめて
「お前たちのなかで、てっぺんまで登って娘の様子を見てきてくれるものはないかい」
と聞きました。
動物たちが次々に挑戦しましたが、みな途中であきらめて帰ってきました。最後にコウモリがやってみると、見事にてっぺんまでたどり着いて、たくさんの実が成っているのを見つけました(たぶん女の子が実になってしまったんです)。
コウモリが実をとって地上にばらまくと、重たい実は木のまわりに、軽い実は少し遠くへ落ちて行きましたが、それより遠くの土地には届きませんでした。そのためこの世にはココヤシの木のある場所と、ない場所があるのです
ココヤシは幹からいきなり葉柄がはえてきて、成長とともに古い葉が落ちて、枝のない幹がにょきにょき伸びて、てっぺんで葉が茂り実が成ります。まさに扶桑のイメージと重なります。そして竹にも。
南からやってきた祖先がココヤシのない国で聖樹を求め、竹をその代わりに選んだと考えたら、ちょっぴりドキドキしませんか?
ちなみに、中国で桑が聖樹とされるのは、エジプトの伝説と関係しているかもしれません。その件に関しては、山海経異聞録・扶桑と『死者の書』をどうぞ。