エノキダケ(目がテン)
エノキダケはエノキ、ポプラ、カキ、ナラなどの枯れ木に生える。別名をユキノシタと呼ばれている。天然のエノキダケはその名の通り深い雪の下に生える。栽培されているものは、まだ若いエノキダケで、育ったエノキダケは傘も広がり、色も茶色。色は日にあたることでメラニンができて色がつく。都内でも公園の切り株などにエノキダケが生えていることがあるが、市販のものと形や色が違うので気づく人は少ない。
エノキダケが食用に栽培されはじめたのは江戸時代の頃。1697年成立の『本朝食鑑』に、エノキの枯れた株や根に米のとぎ汁をかけて栽培したとある。
もっと大規模に大量生産されるようになったのは昭和三年、ガラスの広口瓶におがくず詰めて栽培されるようになった。現在でもエノキダケは同じような方法で栽培されている。
栽培されはじめた頃のエノキダケは天然のものと同じように茶色かった。長野県の農家で土蔵で栽培していたところ、日があたらないために柄が長く薄い黄色のエノキダケができた。白い方が見栄えがいいというので人気が出て、ホクトという会社が(きのこのこのこ元気な子という歌で有名なホクト)が昭和60年にまったく色のつかない純白の品種を作った。
現在の、真っ白なエノキダケの品種にはSOD(スーパーオキサイドジムスターゼ)という酵素の働きが天然のものよりも高く、その働きによって紫外線をあびてもメラニン色素が発生しにくい。そのため日にあててもほとんど色がつかない。
現在のエノキダケの生産方法、おがくず、米ぬか、おから、コーンコブ(とうもろこしの芯を砕いたもの)をプラスチック製の広口瓶につめ、種菌とよばれる胞子から菌糸が少しだけ出たものを植えつける。生育室は湿度95度を保ち、暗くしてある。これは野生のエノキダケが雪の下で育つのを再現するため。気温は摂氏5〜6度(冷蔵庫と同じくらい)。エノキダケはスピセラムロゼウムと呼ばれるカビに弱く、このカビは気温が30度くらいの時に活発になる。そのため、エノキダケは野生の状態でも冬に成長し、カビから身を守っている。
シイタケを干すとうまみが増すが、エノキダケを干すとやはりうまみが増し、その味はスルメに似ているという。エノキダケとスルメイカは、グルタミン酸やアラニンといううまみ成分の組成がよく似ており、トリメチルアミンという香り成分も共通している。
また、エノキダケのアミノ酸はビールとも組成が似ているため、苦味を添加するなどしてビールを作ることもできる。番組では帯広ビールの「とかち晴れのきもち(シャンピニオンビール)」を紹介していた。原材料表示は「えのき茸 麦芽(使用率25%未満) オリゴ糖 ホップ……など(残りは読めず)」