ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

春秋左氏伝における窮奇

 某所で全釈漢文大系の話なんかしてたので、ふと思い出して全釈の『春秋左氏伝』を開いてみた。持ってるわけじゃなく図書館の蔵書である。以前は開架だったのに、見あたらないので司書さんに聞いたら、今は閉架にあるので出してきますとのことだった。『…左氏伝』が閉架ということは、『山海経・列仙伝』閉架ってことである。

 蔵書が増えたせいもあるのだろうけれど、この手の本がどんどん閉架に追いやられてしまうのは困った話。絶版で買えないわ、図書館じゃお蔵入りだわ(言えば出てくるけどさ)、踏んだり蹴ったりじゃないですか。勘弁してくれっちゅーの。

 それはともかく今回の目的は『左氏伝』である。『山海経』に出てくる窮奇(きゅうき)という化け物が『左氏伝』にも出てくるらしいというので前から気になっていたのだ。ところがこの本、上・中・下と分厚い本が三冊あって、出してくる司書さんも「よっこらしょ」って感じならば、受け取るこちらも「うひぇ、おっとっと」ってなもんで。こんなの絶対持ち帰りたくない。どうにかして手っ取り早く必要な部分だけ見つけたいわけだ。

 嬉しいことに全釈漢文大系には巻末に索引がついている…んだけど、えー、三冊分の索引がこんなちょっぴりかよ。役にたつのかなあ。首をひねりつつ「窮奇」で引いたがみつからない。少昊(左氏伝に出てくるのはもうちょっと難しい字の昊だけど)で引くと求めてるのとは別の部分にあたってしまう。こりゃ借りなきゃだめか?重たいので持ち帰りたくないんだけど(三冊も!)。

 半分あきらめつつ索引を頭から読んでいると「不才子あり」という項目をみつけて小躍り。これこれ。これですよ。探してたのは。想像以上に役にたつのかも!

 文公(下)の最後のほうに「少昊に不才子あり…」という文章がある。これによれば窮奇は少昊の息子で、悪人の味方、善人の敵、悪口が大好きで人からは信用されず、忠義を尽くすということをまったく知らないダメなやつだったと書いてあります。同じ部分に饕餮(とうてつ)についても説明されている。こいつも悪いやつで縉雲という人の不才の子だということだ。なお、訳注によれば窮奇は「困った物好き男」の意味で、饕餮は「食らい抜け」の意味である。

 『山海経』の窮奇はトゲだらけの牛であったり、翼の生えた虎であったり、あくまで化け物として描かれている。また少昊と結びつける記述もなかったような気がする(うろ覚えなのであったらごめん)。少昊の不才子が化け物化したものか、はたまた不才子を化け物の名で呼んだのか激しく気になるところ。

 ちなみに全釈漢文大系は全巻そろって絶版中です。ここで全巻リクエスト投票を集めてるので、興味のある方は協力してあげてください。

◎全釈漢文大系全巻の復刊リクエス
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=7171
 ↑は岩手富士さんって方がやってるリクエストで、最初にこっちが存在してたんですけど、どうも内容がわかりにくいのか票が伸び悩んでるみたいなんですよー。うちなんか読んでる人は、中国の古典にそれなりの感心を持ってる方が多いと思うので、もしよろしければ投票してあげてくださいな。100票のリクエスト投票があると出版社に復刊をお願いする連絡が行く仕組みです。

◎全釈漢文大系の中の、『山海経・列仙伝』の復刊リクエス
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=8849
 でもって、↑がわたくしがやってる復刊リクエスト。作ってから全巻リクエストがあることに気づいて、合流するかどうか迷いつつ、やっぱり個別でお願いしようってことにして始めたものです。こっちはもう100票集まって出版社に連絡してもらえたみたいなんですけど梨の礫。ま、票集めなんて出版社に話をもちかけるきっかけでしかありませんからねえ。ちなみに、こちらもまだ投票はできます。こういうのは数じゃないです。心です。熱い思いのある方はぜひお願いします。