ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

天児

 天児と書いて「あまがつ」と読む。竹の棒を2本組み合わせてT字を作り、練絹で綿を包んだだけの丸い頭をつけた素朴な人形。これに着物を着せて赤ん坊の枕元におき、赤ん坊にふりかかる悪いものを身代わりに負わせた。古くは平安時代から江戸時代まで高貴な人々の家で子供が生まれると天児を作った。江戸時代には、赤ん坊の新しい着物はまず天児に着せて、次に赤ん坊に着せる。そういうことを五、六歳になるまで行う。男の子は十六歳で元服すると天児を神社やお寺に納めた。女の子は結婚しても婚礼道具とともに天児を連れて行き、お供え物などをして一生涯大事にした。以上はサントリー美術館で開催された「姫君の華麗なる日々」展にて、学芸員の方から聞いた説明。
 似たような起源のものにひな人形があるが、こちらは細工もしっかりしている。天児も長年使うものなのだから、ひな人形のように立派なものがあってもよさそうだが、素朴な作りのまま江戸時代まで伝えられているのが不思議だ。しかしあの素朴な作り(悪く言えば少々気味が悪い)には、潜在意識に訴えかけるような何かがあるのも確か。ひな人形のように立派なものになると、そこに自分ではなく別の人格を見てしまう。自分の分身とするためには、天児のような単純な作りのものでなくてはならないのだろうか。