ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

アメリカCG版の映画『ATOM』を見た

 これは一昨年の映画でしたっけね。映画館に見に行く予定だったのですが、近くで吹き替え版しかやってなかったので結局行かなかったんです。アメリカの役者さんがどんなふうに演じてくれてるのか見たかったんだもの。CS局のムービープラスが字幕版を放映してたので、録画して今ごろやっと見る事ができました。

 アメリカの製作で、しかも CG っていうのは果たしてどうなんだろうと思うのですが、いや、なかなかいいですよ、これ。全然違う話にされちゃうんじゃないかと思ったけど、原作の意図を充分に汲み上げた上でのオリジナルストーリーだし、キャラデザインもちゃんと手塚の漫画から起こしてますしね。こういう手塚作品への敬意を感じるリメイクはとてもいいと思う。しかも面白い。あんまり話題にならなかったのはもったいないなあ。

 お話は、いつだかわかんないけど地球の未来っぽい。地上が荒廃したので、地上の一部を切り取って空に浮かべちゃったのがメトロシティ。セレブはみんなメトロシティに暮らしているんだけど、地上にはまだ人が大勢残ってて食うや食わずの生活をしてる。

 メトロシティではロボットを奴隷のように使っていて、いらなくなったら地上に捨てちゃう。地上ではその部品を拾ってあることに役立てているんだけど、それはネタバレになるので書かない。

 メトロシティには Dr.ビル・天馬と Dr.エレファン(お茶の水)という二大科学者がいて、天馬博士は戦闘用のロボット「ピースキーパー」の開発で有名。一方、お茶の水博士はエネルギーの研究をしてる。安全でクリーンな究極のエネルギーである「ブルーコア」を抽出したら、その反物質である危険な「レッドコア」もできてしまい、扱いには慎重にならなくては……と演説をぶってる最中に大統領が現れて、ピースキーパーにレッドコアを入れてしまう。

 ところで、天馬博士にはトビー(トビオ)という息子がいて、ちょうどピースキーパーを見学に来てたりする。しかも危険な実験エリアに迷い込んで暴走したピースキーパーの餌食になって死んでしまう。

 息子を失ったショックで少しおかしくなった天馬博士は、息子そっくりのロボットを作り、そのエネルギーとしてブルーコアを入れる。しかし、いくらそっくりでもやはりロボット。息子とは違う息子のコピーに嫌気が差した天馬博士は、ここからトビーを家から追い出してしまう。

 ところで、ピースキーパーの暴走にまだ懲りてない大統領は、ブルーコアも手に入れようとしている。トビーがブルーコアを入れられたロボットであることに気づいて、軍を総動員して捕まえようとするが?!


 この先、トビーは地上に降りて壊れたロボットや子供たちと出会うんだけどそこは見てのお楽しみ。地上でも手塚キャラでは定番のあの人が出てきます。お話は原作とかなり変わってますけど、おさえるところはちゃんとおさえてるんですね。ロボット同士の戦闘シーンなんか、手塚の漫画をちゃんと見て研究してるんだなって思います。こういう話がアメリカ映画っぽく自然に流れるようなリズムで続いてて、日本の製作ではこうは行かないなと納得するやら悔しいやら。

 日本では手塚は古いという人と、手塚最高ともちあげる人のツーパターンに別れちゃって、そのどちらも「リメイクなんかどうでもいい、ましてやアメリカ人が作ったものなんて興味ない」って感じなんでしょうけど、頭を真っ白にしてから見たら絶対面白いですよ。

 なお日本公開時のタイトルは ATOM でしたが、原題はやっぱり ASTRO BOY だったみたいですね。登場人物はトビーのことを「アーストロ」と呼んでるのに、字幕では「アトム」になってるのはご愛嬌。

 なんでも、ATOM という言葉はアメリカの隠語でおならのことを意味するそうです。60年代虫プロ版のアニメをアメリカに持って行った時、このままのタイトルじゃまずいってことになったらしいんですが、アメリカ側のプロデューサーだかマネージャーだかの子供に見せたところ、アストロボーイと連呼するのでそのままタイトルにしたって、手塚が生前書いてました。でもあの人はたまにホラを吹くのでほんとかどうかは知りません(笑)