紅はこべ
紅はこべ(創元推理文庫 バロネス・オルツィ/西村孝次)
紅はこべ(講談社 エンムーシュカ・バーストウ・オルツィ/山崎洋子(1947ー))
↑読んだのはコレじゃなく、中田耕治の訳(筑摩書房・世界ロマン文庫)です。図書館で借りました。中田氏の翻訳も悪くはないのですが、やや古いので、他の翻訳も気になります。
作者名が「オークシィ」「オルツィ」など一定しませんが同一人物です。田中氏によれば本名がエマ(エンムーシュカの愛称か?)で、モンターギュ・バーストゥ夫人だそうです。オルツィは旧姓で、父親がフェリックス・オルツィ男爵です。ということは、バロネスはバロン(男爵)の女性形でしょうか。
ハンガリー出身でイギリスで活躍した女流作家です。オークシーは英語読みで、オルツィはハンガリー語読みです。エンムーシコ・マグダリーナ・ロザーリア・マリア・ジョーセファ・バルバラ・オルツィ・バーストウがフルネームとのこと。じゅげむじゅげむごこうのすーりきれ……参考>バロネス・オルツィ - Wikipedia
フランス革命のあと、貴族たちが貴族であることだけを理由に処刑されていました。ところが捨てる神あれば拾う神あり。「紅はこべ」と名乗るイギリス人が、痛快な方法で貴族たちを救いだし、イギリスに亡命させる活動をはじめました。
紅はこべ は勇敢で、頭がよく、そのうえ変装の天才です。ある時はフランス軍の将校に化け、アリん子一匹通すまいと目を光らせる番兵の目の前を、やすやすと通り抜けたりします。
しかし、その 紅はこべ に命の危険が迫ります。それというのも、彼の妻マルグリートが紅はこべを夫とは知らず、フランス人に情報を流してしまいました。そうしないと兄を殺すと脅されたのです。
自分が売り渡したのが夫だと知ったマルグリートは苦悩します。そこで夫の部下である若者の助けを借り、紅はこべ に危険が迫っていることを知らせるため、ドーバー海峡を渡るのでした。
前半だらだらとつまらない登場人物の紹介が続きますが後半からいきなり面白くなります。正直なところ、前半はまったく不要で読む必要がありません(えーっ)。
ラ・セーヌの星か、怪傑ゾロか、そういうのを想像してしまうのですが、活躍するのはほとんどマルグリートです。いや、紅はこべも最後にちょっとだけ痛快に活躍するのですが、ちょっとだけです。
タイトルから期待できるような紅はこべと仲間たちの活躍は続編にゆずられています。役者の田中耕治によれば、紅はこべシリーズは「わたしが知っているかぎりで、あと八編」あるそうですが、実際には全部で十三編あり、紅はこべの子孫や先祖の話も含めるともっとあるそうです。
しかし、イギリスでもあまり読まれておらず、邦訳は二作目の『復讐』が世界推理小説大系に収録されているのみです。
http://www012.upp.so-net.ne.jp/carameltea/pimpernel/
こちらのサイトで三作目の「The Elusive Pimpernel」の翻訳が途中まで公開されています。
なお「紅はこべ」というのは実在する花の名前です。いわゆるハコベはナデシコ科ですが、紅はこべはサクラソウ科なので仲間ではありません。