シンコネッスリー
ある日、ラジオを聞いていたら、リサ・ステッグマイヤーが何か話していた。
「ワタシはシンコネッスリーのようなことを信じるほうなんですよ」
「虫の知らせってやつでしょうか」
聞き手のアナウンサーが相づちをうった。
「そうです。シンコネッスリーは…」
彼女はくりかえし、シンコネッスリーを連発した。
虫の知らせ…シンコネッスリー…なんじゃそりゃ。
もしかして synchronicity のこと?
今の今までずっとシンクロニシティーと読んでた。あわてて国語の辞書を引いたら日本語的にはそれであってるらしい。でも、ねいちぶなお姉さんはシンコネッスリーと言ってた。もー、ぜんぜん違うじゃないかー。
…ということがずいぶん前にあったんですよ。それ以来、原語の発音が日本語の片仮名表記と極端に違うことを心の中でシンコネッスリーと呼んでいるわけですが、つい最近また見事なシンコネッスリーを発見しました。
発見したはずなのですが、よく覚えていないのです。オーストリア(豪州じゃなくて墺太利のほう)の国選料理達人の称号を持っているというナントカさんが、その称号をドイツ語で発音しているのですが、どう聞いてもオーストリアには聞こえませんでした。
一体なんて言ってたんだろう。ああ、思い出せない、キモチワルイー。
って、書いて終わりにしようと思ったんだけど、オーストリアを英語の綴り Austria にしてから英-独翻訳にかけたら軽くわかってしまいました。 O"sterreich だから、エステルライヒ…いや、エスターライヒですかね。オーストリアの、だったら、O"sterreichisch エスタライヒッシュ…そうそう、こんな発音だったわ(O"はOのウムラウトです)。なんだ、ドイツ語で書くと豪州とは綴りがぜんぜん違うのね。Ost は東だから、東の土地とかそんな意味? どこから見て東なのかしら。
それも調べたらわかってしまいました。フランク王国のカール大帝が東からの敵を防ぐために前哨基地を作ったのが由来だそうです。フランク王国っていうと、今のフランスあたりから、ドイツ、スイス、イタリア北部、オーストリアまですっぽり収まっちゃうような大きな国だったんでしたっけ? なるほど、オーストリアは確かに東の端っこだわ。
ああ、すっきりした。
エスタライヒッシュ・シンコネッスリーの巻きでございました。
似たようなのにフィンランドを原語で言うとスオミってのもありますが、これはもう言葉の意味からして違うような気がするからシンコネッスリーとは別の味わいなのよ。シンコネッスリーの神髄はキャサリンがエカテリーナになるようなことなの。
でも、よく考えたら、オーストリア:O"sterreich は途中に英語が入ってるから、シンコネッスリーの例としてはちょっとひねりが入っててずるいわね。じゃ、疑シンコネッスリーってことで(だんだんカステラ系伝説みたいになってきたわ)。