わが愛娘・とも子不明にして不徳なり
鹿島とも子の養父による手記。鹿島とも子自身は米兵が日本人に産ませた子供だそうだ。米兵には本国に妻子があり、帰国命令が出た時とも子を連れていかなかった。母親はとも子を連れたままでは生活できず、米軍で通訳として働いていた著者に子供をあずけて別の男と結婚する。ふたりがアメリカに渡る前にとも子は正式に著者の養女として籍を入れる。前半は養女の鹿島とも子について書かれているが後半は父親自身の半生をつづっている。この父親の半生が本題とあまり関係ないのに面白い。いや、関係ないかっていうと、この父親だからこそ、オウムに入信した娘をまっすぐに見つめて受け入れることができたんだろうなと思う。
また本当に本題と関係のない不思議な話も出てくる。著者は終戦直後に謎の赤外線治療器と出会っている。黒田保次郎というもともとは米屋だった人が開発したというもので、赤外線と可視光で1、2パーセント程度の無害な紫外線が照射されるという。病院の物療科にも類似の装置があるが、それとは効果が違うという。
これを、足首・膝・脳髄・顎の下・腹・腰・足の裏の七ヶ所に順番に当てていくと、どのような難病でも直ってしまうという。病気や怪我の患部ではなくそのポイントに当てれば直るそうで、まるでオウムがとくチャクラの覚醒のような話だ。
著者は自分の怪我に試してみてその効果が絶大だったので戦後しばらくこれで人を治療していたという。患部に直接あてても効いたとのこと。鹿島とも子がやけどをした時も、この機械のおかげで跡形もなく直ったそうだ。今でも木更津近くの老人ホームでこの機械が愛用されているという話。
「黒田保次郎 赤外線」とかで検索するとそれっぽい器具を販売しているサイトがヒットするけれど、この本に出てくる機械と同じ質のものなのかはちょっとわからない。気になる話ではある。