NHK
もう二十年も前の話。当時わたしはNHKが嫌いじゃなく、そこそこ見てたのでわりかし積極的にお金を払ってた。ところが、どうも請求金額がおかしい。うちには二ヶ月に一度来てたと思うんだけれど、テレビで言ってる金額(これは何カ月分なのかちょっとわからない)と一致しない。二倍しても一致しない。
テレビで言ってるのが何カ月分かわからないので、高く請求されてるのか、その逆に得してるのか、ちょっとわからない。とにかく金額が違うので集金人に「ちがうじゃないの?」と聞いた。当然、料金表くらい持ってると思ってた。
しかし、その人は、料金表を持っている様子もなければ、どういう決まりで料金が決まるのかも知らなかった。「テレビで言ってるのは白黒の金額じゃないんですか?」などと言うけれど、じゃあ、白黒テレビ一台ならいくらなのかは、明確に答えてくれない。
そんなこんなで集金人とトラブルになり、払うのが嫌になったので故意に払わなくなった。たいした収入もなかったので払わずに済むものなら払いたくない、という気持ちも働いてる。「お金ないです」と言って追っ払ったこともあった。
ある時など、居留守を使ったこともある。玄関の扉の向こうで、集金人が「くそっ!」と言って何かを蹴った音がしたこともある。身なりの立派な中年男性だったけれど、そこまで悔しがるというのはよっぽど厳しいノルマを課せられていたのかもしれない。
そんなことを何カ月か続けていたら、集金人のほうから契約を解除できると言ってきた。
生活が苦しいという理由でならば受信料を免除する制度があるといって、小さな紙を手渡されたが、それとは全く別に契約の解除もしてくれた。別の人間が料金を取りにくるかもしれないけれど、台帳からは削除しておくので、二度と払ってはいけないとも言われた。
免除の手続ができるならしてみようと思い、もらった紙をよく見ると、生活保護受給者ならば申請により免除できる、というものだった。保護は受けてないので出さなかった。
その後、何カ月かすると、今度は女性の集金人がやってきたけれど「生活保護を受ける予定なんです」と言って追い返した。誰が来ても、何度来ても、生活保護という一言でにこやかに帰って行った。ウソはいくないと思ったけれど、料金すらまともに説明できない人にお金払えないし。
トラブルの元も集金人だったけれど、契約を解除できることや、生活保護受給者への免除制度があることを教えてくれたのも集金人だった。でも感謝はしたくないな。おかげでわたしは NHK が嫌いになった。