ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

為体(ていたらく)

 次いでだから為体の読みと表記について考えてみたりします。

 為体をそのまま読むと「いたい」とか「いてい」でしょうか。湯桶読みしても「ためたい or てい」「なりたい or てい」「たりたい or たりてい」で、どう頑張っても「ていたらく」とは読めませんよね。

 それによく見るとなんか変じゃありませんか? 「てい」は「体」にあてられる読みでしょう。「為体」に「ていたらく」なんてカナをふったら逆さですよ。

 どうもこの言葉、漢文的用法みたいです。つまり日本語じゃなくて中国語っぽい単語なんんです。中国語と日本語は語順が同じじゃないんですよ。中国語の語順は英語に近くて、たとえば「私は魚を食べる」なら「我吃魚」です。漢文風に書き下すと吃魚の間にレ点を打って「我魚を吃す(われさかなをきっす)」ですかね。「吃す」は食べるって意味ですよ。

 「〜する〜を」というのが中国語の語順です。
 為体も同じ理屈で、ちゃんとした日本語に書き下す時は途中にレ点を入れて「体為く」でしょうか。最近の書き方だと「体たらく」と助動詞を平仮名にするかもですが。体を為すこと、そういう有様という意味です。

 為体という言葉が本当に中国産の漢文に出てくるかどうかは浅学にして知りませんが、それが漢文的な言葉であることは間違いありません。つまり中国語です。漢字で為体と書くと、まるで日本語の文章の中に中国語をそのまま使ってることになります。日本語としてこなれた表記は「体たらく」もしくは「ていたらく」ではないでしょうか。

 ただ、為体と漢字で書くのが間違いかっていうとそうでもなくて、「ていたらく」という言葉そのものが漢文的発想から生まれたものなので、為体という漢字をそのまま使ってもよいことになっているんだと思います。

 似たような言葉に「なかんずく」ってのもあります。漢字で書くと「就中」です。今っぽい読み方をすると「中に就く」ですかね(中でも、特に、という意味)。これも読みが逆転してるでしょ? こういうの他にも沢山ありそうです。思いついたらコメントでも残していってくださいませ。(注

 近い成り立ちのものに為替(かわせ)もそうらしいですよ。為替と書いて「替えを為さしむ」と読むと漢文の読み下しっぽいのですが、要するに替えることなので「かわし」と読んでやがて「かわせ」になるらしいです。為替という言葉は鎌倉時代からあるそうですが(参考>このへん)、いわゆる手形や小切手のたぐいに為替という字をあてたのは福沢諭吉が最初だそうです(参考>このへん)。

 ちなみにわたくし中国の古典を扱うサイトとかやってるわりに高校の時漢文の授業中に寝てました(先生に、テストは最低だが古典は好きそうだからまあよしと言われた…汗)。ゆえに間違った説明をしてるかもしれませんので取り扱いにはご注意ください。

注…単に漢文的で中国語をそのまんまって言う意味では「読書(書を読む)」とか「就寝(寝就く)」とか無数にあるんですけど、こういうのは音読みしてる(中国語っぽく読んでいる)ので不思議ではないです。これを今っぽく解釈すると外来語をカタカナで書くみたいなもんですよね。でも、為体とか就中とかは外国語の表記のまま外国語の発音では読まずに日本語の読みをあててるわけですよ。だからなんとなく落ち着かないの。