しわす
陰暦十二月の別名を「しわす」といって師走という字をあてるのは有名です。その由来は師匠も走り回るほど忙しい月だからとよく言いますが、この場合の師匠って一体誰でしょう。
坊さんのことだという話を学校の先生に聞いたことがあります。でも、年末に死人が増えるわけでなし、お盆やお彼岸のような仏事もないのに、なぜお坊さんが走り回るのでしょう。
そう思って辞書を引くと「師走坊主」という言葉がありました。
忙しい坊さんのこと?
いえいえ、その反対。人々は大忙しで念仏なんか忘れてしまう。お寺もお坊さんも年末ばかりは用なしで、人から相手にされないお坊さんは無用の長物。ゆえに、みすぼらしいこと、無用なことを「師走坊主」というのだそうです。同じような言葉に「師走浪人」というのもあるそうです。
坊さんも走る月に坊さんは無用だというのだからよくわかりません。まあ、もとは四極月(四季がはてる月)をしわすと読んで、師走という字を当てたという説もあるそうで、師に大した意味はないのかもしれません。
辞書にもうひとつ面白い言葉がありました。江戸の昔、師走に油をこぼすと火にたたられると信じられており、こぼした人に水をかける風習がありました。その風習を「師走油」というんだそうです。油と火が結びつくのはわかりますが、なぜ十二月限定なんでしょう。わかったようなわからないような、謎の風習です。
なお十二月の別名には極月、臘月とも言うそうです。極月は一年が極まる月だから。臘月は冬至後、第三の戌の日に行った行事を臘と言い、それが陰暦十二月にあたるからってことみたいです。