ダ竜(ワニ)は日本にはいない。紅毛(オランダ)より小さなものが薬液に浸された状態で渡来し、見せ物にされていたことがある。紅毛でカアイマンと呼ばれているものであると『本草綱目啓蒙』にある。
カアイマンとは、今でいうカイマン類のことであろう。中南米に生息するアリゲーター科の一種で性質は比較的おとなしい。これをホルマリンにでも漬けたものが見せ物にされていたのである。同書が成立したのは江戸時代末期であるが、鎖国中でありながら欧米の文物がオランダ経由で入ってきていたことを伺わせる。医学等の知識は言うまでもないが、珍しい動物の標本などももたらされていたようだ。