ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

草廬漫筆より抜き書き

 『草廬漫筆』は武田信英による尚古的考説で成立は江戸時代とのこと。著者や成立年代について調べても今ひとつこれといった情報にたどりつかない。以下は斜め読みで目についたものを抜き書き。

 底本は『日本随筆大成(第2期 第1巻) 兎園小説 草廬漫筆』

菖蒲の始

 仁徳天皇三十九年夏五月、始て詔ありて、摂州東生郡玉江の菖蒲を献ぜしむ。是後代五月菖蒲を曳の縁故也。

潮漉石 水漉石、蛮名スラングステン

 阿蘭陀船中に用意す。夫潮は常の水より軽く、水は潮より重し、海中といへ共、潮ノミ有にあらず。水と相交れり。海中四十尋より下は真水なり。潮を漉てつかふときは常の水なり。故に紅毛人、此石を船中に用意する也。徜(原文はニンベン)此石の用意なき時は、俵に米を置て潮を漉て水を取べし。水漉石、日本にては大和生駒山の麓生駒谷に有。生駒山の名産なり。此石やはらかなるは砕け安く、堅きは水を漉がたし。程よきを佳なりとす。船中往来の人は必ず持べき事なり。

# 原文は漢字カタカナまじり文。
# 潮が通常の水よりも軽いとあるのは原文のママ。
# スラングステンについてはスランガステーン slangensteen という名称で他の書(和漢三才図会)にも見えるというが、こちらはチェックしていない。

蝦夷 一名粛慎国

 此国の風俗衣服は日本の古衣を貴びぬ。又富貴なる者の酒宴などには酒樽を積、其上に日本の古き衣を重ね置事なり。かの国にての織物は、ヲイヒヤウといふ木の皮にて織たる物にて、色黄にして、紋は是をアツシといふ。袵は左まへに合せ、シナといふ木の皮を帯とする也。男女おとも湯浴せず。眉は両眼の上に一文字に生、髪は鬚髭ともに剃事なし。酒を飲、食を吃する時は、箸を以て髭をかき上、啜り込。酒は行器のごとき物に入、杯は飯椀を入てすくひ飲む。其椀に巴の紋を付けたり。女は唇の上人中に入墨す。山野に出る者は雪中といへども徒[足先]にして、半弓を携へ、将又コサといふ笛を吹よし也。
(コサ笛の図) 十二巻木の皮を巻たる物也。色は白黄色、長さ一尺二寸。