ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

サイボーグという言葉を創作に取り入れた日本最初の例は水木しげる?

 日本の漫画家さんたちは、どうやら朝日新聞の記事を読んでサイボーグという言葉を使いはじめたようです。サイボーグという言葉を発明したのは誰? サイボーグという言… - 人力検索はてな で上がっているものでは、

  • 1960年?月(諸説あって定まらず。1961年とする本も)、貸し本時代の水木しげるが「サイボーグ」というタイトルの漫画を書いているらしい(入手可能っぽいので購入を検討中です)。# 買いました。

↑この本の目次

しげさんの「サイボーグ」は昭和三十六年(1961年)ってことになってました。しかし、ウィキペディアには 1960年の作品として掲載されていますウィキペディア情報だと猫又は1962年(昭和三十七年)とありますが、同書によれば昭和三十六年作品になっており、結論として「よくわからない」が正しいようです。

  • 1961年3月〜10月、手塚治虫が「少年」という雑誌に「鉄腕アトム・ホットドッグ兵団」という漫画を連載しており、その中でサイボーグという言葉が使われている。
    • ヒゲ親父の愛犬が、月世界へ行こうとしているある国の女王にさらわれて、兵士として改造されてしまう。犬の皮をはがれ、人間のように直立し、知恵を与えられ、ロボット同様宇宙空間でも生きられる。
    • お茶の水「これはきょくたんなサイボーグなのじゃ。サイボーグというのは人間のからだの一部をロボット装置とかえたものじゃ。なぜこんなサイボーグなんかが必要なのか? 宇宙の生活はなまみの人間のからだではいくら宇宙服を着ていてもとてもたえられないうらいきびしい世界が多い……だからからだの一部、たとえば心臓とか肺とかを人口のものととりかえて生活できるようにするのじゃ」←宇宙利用が前提の説明
    • このエピソードは後年単行本に収録されるにあたって、冒頭に数ページの解説が追加されている。手塚治虫自身がアトムにサイボーグについて「語源はアメリカだよ。昭和三十三、四年ごろだったかな。そのころ宇宙医学や人工臓器学がさかんになってね。人間はどこまで体を機械ととりかえられるかという問題がかなり話題になったりした。けっきょく人間の体は脳と神経いがいは、たいがい人工臓器とかえることができるんだ」と説明している。手塚の説明だとクライン博士より前にさかのぼってしまうけど、人工臓器学が盛んになったのがその頃という意味で、厳密に調べて書いてるわけじゃないと思う。
    • サイボーグ44号(犬のペロ)は、全身つるんとしてて顔に縦線が何本も描いてあり、石ノ森章太郎ロボット刑事などを思いだすようなキャラデザイン(手塚の方が先みたい)。
    • 「少年」1959年12月〜1960年2月号連載の「人工太陽球」に、事故で体のほとんどを失い、首から上以外の全身を機械と交換されたシャーロック・ホームズパンという探偵が出てくるが、ここにはサイボーグという言葉が使われていない。あくまでロボットなのか、人間なのか、という話になっている。
  • 1961年?月、横山光輝が「鉄人28号」の中で、超人間ケリーというサイボーグを描いてるらしい。とりあえず最寄りの図書館にあるやつを取り寄せ中です。# [追記]光文社文庫版によると、超人間ケリーが出てくるドラグネット博士編は「少年」1961年5〜10月号に連載されたそうです。近いうちに国会図書館で「少年」を読んできます。

 …このような感じで、水木しげるの1960年というのが本当ならば、朝日新聞の記事を読んだ直後に描いてる可能性が高く、創作では日本で最初の使用例かもしれません。ただ、残念なことに水木しげるの貸し本時代の作品は、いつ発表されたか正確なデータがないようで、当時の本でも出てこないかぎり特定しにくいです。

 発表年月日がはっきりしている例では、今のところ手塚治虫の「鉄腕アトム・ホットドッグ兵団」が最初のようですね。# ここまで来たら近いうちに国会図書館で「少年」を読んできます。アトムも鉄人も同じ雑誌に連載されてるので確認は簡単です。


 なお、漫画家さんたちは英語の文献を読んでいたとは考えにくいですが、SF作家さんなどで翻訳業もやってる方が、ひょっとするともっと早くにサイボーグを作品に取り入れているかもしれません。1960年10月17日の朝日新聞より前の例を発見した方はぜひお教えください。