ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

サイボーグという言葉の日本での初出は朝日新聞の夕刊?

サイボーグという言葉を発明したのは誰? サイボーグという言… - 人力検索はてな
 この質問で、サイボーグという言葉の発明者が、アメリカのクラインズという人だとわかりました。1960年5月の学会で発表され、その内容は同年9月に米アストロノーティックス誌(Astronautics)などに掲載されました。


 では、日本での初出はいつでしょう?
 これについても上記質問でほぼ解明されています。どうやら朝日新聞の夕刊に載ったのが最初のようです。せっかくだから、その記事を図書館で探してきました。

 問題の記事は 1960年(昭和三十五年)10月17日の夕刊に掲載されました。科学特集「宇宙人間サイボーグ」と題される記事で、1ページの6割くらいをこの記事で埋めているのでかなり読みごたえのある長い文章です。要点だけ抜き書きしてみます。

  • アメリカのヒューズ航空機会社の高等計画局長ジョン・G・マイトナー博士という人が宇宙空間で人間を適応させる方法として以下の四つを提案している。
    1. 宇宙服の研究
    2. 宇宙環境の方を変化させる
    3. 人間自体の変化(ミュータントの出現を待つ)
    4. 人間自体を改造する
      • 第二次世界大戦中に実際に研究された例として、消化酵素を丸薬にして飲めば人間もウシのように草を消化して生きられる、というのが紹介されている。
  • マイトナー博士四番目の提案をさらに進めたのがクラインズ技師と、クライン博士で、この二人が Cybernetic Organism を縮めて Cyborg サイボーグという言葉を作り出してコロンビア大学から論文を発表した。
    • N. S. クライン博士はニューヨークはロックランド・ステイト病院の精神病学者でコロンビア大学助教授。
    • M. E. クラインズ技師は同病院で人間の体の中のサイバネティックス(伝達と制御の問題)を研究している。
  • クラインズとクラインが考えたサイボーグは
    • 機密でぴったりとした薄皮状の服を着て、真空の宇宙空間を機密キャビンを使わずに移動する。
    • 口は封印され、使用しない。
    • 話をする時は意思を電気信号に変えて通信する。
    • 口が閉じているので食事もしない。凝縮された食物を胃袋や血管などに直接注入する。
    • 便は分解されて食料として再利用する。どうしても役にたたないわずかな廃棄物は背中の缶に集められる。
    • 腰のベルトには、血圧、脈、体温、平静さなどをコントロールするための薬液を体内に注入するためのチューブがついている。
    • 背中に電池を持っている。
    • 植え込まれた人工臓器で炭酸ガスを分解し、酸素をとりだす事もできる。
    • 「このようにして自動的無意識的に働く一個の人間器械系ーーすなわちサイボーグができ上がるのである」
  • サイボーグという発想が人間冒涜にならないか、という新聞記者の問題提起に対して、明大教授の新■一郎(■は文字が潰れていてよめない)氏と評論家の荒正人氏が意見を寄せている。
  • 米誌アストロノーティックに掲載されたサイボーグにされたネズミの写真と、酵素入りの丸薬を飲んでウシのように草を食べる宇宙飛行士のイラスト(出典は"NANA"とだけある)が掲載されている。

 今のところ、この記事が日本での最古のようです。朝日新聞しか調べていないので、もしかすると讀売や毎日に同様の記事が掲載されてるかもしれません。