ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

山本榮『國民學校教師の為の簡易樂器指導の實際』/カスタネット・ミハルスに関する資料 2012年12月19日追記

 国会図書館近代デジタルライブラリーカスタネットミハルスに関する資料をもう一件みつけました。
 以下は山本榮『國民學校教師の為の簡易樂器指導の實際』より引用。奥付けを見ると昭和十八年八月十六日發行(一〇〇〇部)とあります。西暦でいうと1943年の本です。

 ミハルスは紐附きカスタネツトを取り扱ひ易く改良した樂器にして、舞踊家千葉みはる氏の考案になる。カスタネツトに比べて音色の劣る嫌はあるが、値段安く、兒童にも用意に使ひこなせるところにこの樂器の價値がある。

 構造 カスタネツトの紐の代りにゴムバンドを用ひ、このバンドに拇指と中指を嵌めて打ち合はせるのである。

 奏法
 (イ)片手打ちの場合 右手を使用し低學年用の指導に用ひて便利である。
 (ロ)兩手打ちの場合 一組のミハルスを左右兩手に嵌めて用ひる。

 「カスタネツトの紐の代りにゴムバンドを用ひ」とあるので、慌てて読むと現在使われているゴム紐つきのカスタネットを想像してしまいますが、この本でもミハルスはあくまで蝶番(ちょうつがい)でつないでパクパクさせる楽器で、ゴムバンドには「拇指と中指を嵌めて」使います。挿し絵もついていますから以下のURLを見てください。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1444587/24

 また、この本にはカスタネットのことも書かれています。スペインの楽器であること、紐で結ばれたものと柄がついているものがあることなどが説明されています。

カスタネツト

 構造 黒檀のような非常に堅い木にて作られたスペインの樂器にして、我國町藝人の使用してゐる四ツ竹に似たものと、圖の如く柄の附いたものとがある。

(挿し絵)

 紐附カスタネツトは、紐を拇指に通じ手平の内に納めて二つの面を打ち合はせるのであるが、普通舞踊に用ひ演奏上非情な技巧を要し國民學校用としては不適當であるから省略する。
 柄附カスタネツトは普通音樂用として用ひられ、極めて節奏的な楽器である。

(以下、柄付きカスタネットの奏法の解説が続く)

http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1444587/23

 これを読むと、この時代にはまだ現在の物のようにデフォルトで口があく工夫が施されていないことがわかります。

柄付カスタネット エボニー(コクタン)製

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価格:5,040円(税込、送料別)

 ミハルスなのか、カスタネットなのか、という問題について反響が高く、今でもリツイートをいただきます。

 ミハルスカスタネットとはまったく別の楽器であることは確かな事です。ミハルスはスペイン民族楽器のカスタネットとも違うし、現在の幼稚園や学校で使われている教育楽器のカスタネットとも別のものです。

 しかし、名前が混乱したまま定着している例は沢山ありますので、もしその状態が何十年も続いているならデタラメとも言い切れません。#ただし、わたしの子供時代(40年近く前なんですけど…汗)のことを思い出すかぎり、幼稚園でも学校でもミハルスという言葉は使われていませんでした。

 個人的にはいつごろから呼び名が混乱しているのか知りたいと思っています。