紙の起源
この日記は2009年に書いています。過去の空白を埋めても日記を書いた日数に加算されることに気づいたので、どうでもいいメモは余白に書いてプラチナ市民を目指してみようかと思います(笑)
さて、紙の起源。一般に紙の起源はエジプトのパピルスまでさかのぼるとされています。パピルスはナイル川に生える植物で、アシ(ヨシ)の仲間であるかのように言われることがありますが、どちらかというと日本のカヤツリグサをごんぶとにして巨大にした感じの植物です。エジプト人はパピルスから作ったシートに文字を書きました。英語で紙のことをペーパーと言うのは、パピルスを語源としているからです。しかし、パピルスのシートは、茎を薄く裂いて、縦横に並べて作るものですから、現代の感覚では紙とは言いにくいものです。
わたしたちが普通に目にする紙は、植物から取り出した繊維をすいて平たくのばしたもので、この方法を発明したのは中国の蔡倫(さいりん)という人で、紀元105年のことだと言われています。
それまで中国では、木簡や竹簡といって、木や竹を平たい棒状に加工したものを巻き簀のように糸でくくり、そこに文字を書いていました。これは大変かさばるものです。そこで帛(はく)といって、絹の布に文字を書くようになりますが、これは非常に贅沢なものでした。
そこで蔡倫は帛の代用になる良いものはないかと考えました。麻や絹を洗う時、水中に残る繊維を編みで漉して乾かすと、絡まって固まることに注目し、現代の紙に近いものを発明したと言われています。
しかし、実際には蔡倫より200年以上前の紙が発見されており、蔡倫の物語はあくま伝説であるようです*1。とにかく、紙は二千年ほど前に中国で発明されたことは間違いなさそうです。この頃の紙は、植物そのものからではなく、ボロ布をほぐした繊維から作っていました。
日本へは610年に僧侶の曇微という人が朝鮮半島からやってきて、紙と墨の作り方を伝えたのが最初といわれています*2。飛鳥時代の紙は中国と同じく布からとった繊維で作っていたことでしょう。それが、現在のような和紙になるのは奈良時代から平安時代にかけてと言われています。和紙は木の皮からとった長い繊維を使うため、破けにくく丈夫な紙ができます。
ヨーロッパでは羊の皮をなめしたものに字を書いていましたが、現在でいう紙を使い始めたのは12世紀のことだと言われています。751年に唐(中国)がサラセンと戦争をして、唐人の捕虜がアラブ世界に紙の作り方を伝えました。それが、12世紀になり、やっとヨーロッパに伝わったということです。
この頃の紙は、麻や木綿のボロ布をほぐして作っていました。印刷技術が発明されると紙の材料になるボロ布が不足し、原料の代用品を模索するようになりました。フランスのレオミュールという人はスズメバチの巣からヒントをえて、木材が紙の原料になるはずだと提案、ドイツのシェファーはさまざまな植物から紙を作る実験をしました。
19世紀になり、ドイツのケラーが砕木パルプを発明し、薬品処理でパルプを抽出する方法も考え出され、工業化が進みました。ヨーロッパの紙は、木材そのものを使うため、大量生産しやすいのが特徴です。
参考「野草で紙をつくる」相沢征雄