ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

シクラメン(目がテン)

 シクラメンの和名は、ブタノマンジュウ(豚の饅頭)、カガリビバナ(篝火花)。

 シクラメンが日本に入ってきたのは明治時代。原産地で sowbread (豚のパン)と呼ばれていたのを直訳したもの。パンが普及していなかったので饅頭があてられた。夏に豚がシクラメンの球根を掘り起こして食べるという伝説から付いた名前。しかし実際の豚はシクラメンの球根を食べない。シクラメンの球根にはサポニンの一種であるシクラミンが含まれるので苦くて食べられない。昔はシクラメンの球根を下剤として使っていたことがある。シクラミンは毒物だが口から取ったのでは大した毒ではない(血管に入ると強く作用する)。下剤としての効果は実際にあると思うが、あまり効果を期待できない話として、ヨーロッパではシクラメンの葉を鼻につめると禿が治ると言われていた。16世紀までは育毛剤や惚れ薬としてシクラメンが用いられていた。

 シクラメンの球根は年々太って行く。記録では100年も生き続けて巨大化した球根がある。原産地のシクラメンは岩や砂地のような悪条件で自生する。環境が悪い時には葉や花を出さず球根に栄養をためて翌年に備える。

 カガリビバナは花が篝火をたいているように見えるから付けられたもので、明治末期、牧野富太郎による命名

 シクラメンという名前は花が終わり、花びらが落ちたあと、花柄(花梗)がゼンマイのようにぐるぐる巻きになることから、ギリシア語の Kyklos(旋回・円)という言葉がもとになって cyclamen と呼ばれるようになった。花柄が渦をまくのは成熟する前の種を巻き込んで葉の下に隠すことで鳥などから守るため。シクラメンの種はべとべとした甘いもので覆われている。これはアリに種を運んでもらうため。

 園芸用のシクラメンには香りはないが、シクラメンの原種には香りの強いものもある。品種改良が進むにつれ香りがなくなったのではないか。

 シクラメンの原種のひとつとされる、シクラメン・プルプラッセンCyclamen purpurascensは、薄紫の小さな花をつける。非常に香り高い。所さん曰く「引き出しの奥にロウソクと線香が一本ずつあるみたいな香り(スタジオ爆笑)」園芸品種にくらべると花は地味だが可憐で、これ自体十分に売り物になりそうな気がする。栽培が難しいのだろうか? 他にシクラメン・ヘデリフォリウムCyclamen hederifoliumなども原種とされている。これも花が小さく地味だが可憐。香りはわからない。

 シクラメンは下を向いて咲く。つぼみも下を向いている。花びらだけが反り返って上を向く。シクラメンの原産地である地中海沿岸は、夏は高温乾燥、冬に雨が降る。シクラメンの花は冬の雨期に咲く。上を向いて咲くと花の中に水がたまってしまい、花粉が破裂してしまう。花粉が水に弱いのは植物全体に言えることで、雨の季節に咲く花は雨の日に花を閉じたり、花を沢山咲かせて生き残る確率を高めるなどの進化を遂げている。シクラメンは下を向くことで花粉を守っている。
 
 シクラメンの花びらが反り返って上を向くのは、花粉を運ぶハチを呼ぶため。花びらの内側(下を向いてる方)は色がグラデーションになっていて、花芯にむかって色が濃い。このグラデーションにハチが誘われてくるのだが、もし花びらが下を向いていると色がハチに見えない。そこで花びらが反り返って内側の色がハチに見えるように工夫されている。マルハナバチでの実験によると、人工的に花びらを下に向かせた花にはハチが集まらなかった。

 シクラメンは葉一枚、花一輪のセットで咲く。つまり葉の数だけ花を咲かせる。

 シクラメンを長生きさせるコツは、水をやりすぎない、一日二時間は日光にあてる、六月ごろに葉をあえて枯れさせ、球根を涼しい場所で休眠させる。原産地は地中海沿岸の乾いた場所で日当たりがいい。水をやりすぎると球根が腐る。


# 番組ではハッキリ言ってなかったけど、シクラメンサクラソウシクラメンカガリビバナ)属の総称で、一種類ではありません。