ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

祝い、めでたや、若松様よ(宮崎県の昔話)

 むかしあるところに、祝い、めでた、若松という三姉弟がすんでいました。祝い、めでたが姉で、若松が弟です。若松は頭もよく、学校でもいちばんの成績だったので、村の子供たちにねたまれ、いつもいじめられていましたが、姉や、通りがかりの六部(巡礼僧)に救われてなんとか切り抜けていました。

 ところがある日、若松は村の子供たちにだまされて毒まんじゅうを食べて死んでしまいました。そこへ六部さんがやってきて「仇をとって思いの花」という紙切れを残して去っていきます。

 祝い、めでたの姉たちは、若松のなきがらを机の前にすわらせて、あたかも本を読んでいるようにみせました。子供たちがこれを見て
「なんだ、若松は死んでいない。あのまんじゅうは毒ではなかったのだ」
といって、自分たちもまんじゅうを食べ始めました。それで、若松をいじめ殺した子供たちは全員死んでしまったのです。

 仇はとれたけど、思いの花とはなんだろう。そう思った姉のめでたは、男のすがたに身をやつして旅に出ました。旅の途中である長者の娘に見初められ、ぜひ養子にといわれますが、今さら女だというのもすまない気がして「一晩だけ、娘さんと同じ部屋に寝て、もし床の間の茶碗の水がひっくりかえっていたら夫婦になります」と言いました。

 次の朝、茶碗はもとのままそこにあったので、めでたははじめて自分が女だとあかし「この水こそ思いの花に違いありません。もし弟が生き返ったらこの家の養子にもらってください」と言って家に帰りました。

 めでたが持ち帰った水を若松の口にふくませてやると、死んだはずの若松が元気に生き返りました。若松は長者の娘と夫婦になり、婚礼の宴では「祝い、めでたや、若松様よ」と歌われたということです。


「日本の民話23・日向編」

 若松様についてはこのへんにいろいろと。「めでためでたの若松様よ」というのは山形の花笠音頭ですが、ほぼ同じ内容でメロディーの違う歌が日本各地に存在しておりまして、九州あたりではその発祥を説明する昔話として上記のようなものが語られているようです。