ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

聖徳太子の子守歌

寝入れ 寝入れ 小法師
縁の 縁の下に
むく犬の候ぞ
梅の木の下には
目きららのさぶらふぞ
ねんねん法師に緒をつけて
ろろ法師に引かせう
ろろ法師に緒をつけて
ねんねん法師に引かせう
御乳母は何処ぞ
道々の小川へ
襁褓濯しに(むつきすましに)
ねんねんねんねん
ろろろろろ

 鎌倉時代に作られた『聖徳太子伝』に見える子守歌だそうです。祥伝社『「子守唄」の謎』という本から引用しました。聖徳太子伝ってやつのホンモノを見たことがないんだけど、ほんとにこんなわかりやすい歌詞の子守歌が出てくるのでしょうか?
 まあ、それはともかく、子守歌にはネンコロロとかオロロンバイとか「ロ」が連続して出てくることが多いのです。『「子守唄」の謎』の著者によると、そのルーツは聖徳太子にまでさかのぼれるそうです。
 江戸時代の雑学者、田宮仲宣の『愚雑爼』(1837年)という本に「子守歌にネンコロロンコロロンとうたふは、むかし皇子を御寝成らせ奉る時、いだき奉りて太平楽の譜を称へてゆぶり奉りしより初まれりとぞ」とあり、皇子とはすなわち聖徳太子のことだと言っています。
 鎌倉時代や江戸時代の文献をひいて聖徳太子が起源だと言われても困るというツッコミもありましょうが、引用元の本は軽い読み物なのでそこらへんは不問ということでひとつ。とにいかく、ロの連続からなる呪文のような言葉が大昔から子守歌には欠かせないものだったということです。
 そこで思い出すのはアイヌの子守歌に出てくる trrrrr... という音です。舌をふるわせてトゥルルルルル…とやります。ええと「走れージョリー trrrrr... 」ってのと同じです。アイヌではこの trrrrr... っていうので子供をあやすらしいのですよ。どう考えてもこんなんじゃ子供は寝ないと思うんですけど、子守歌にも織り込まれてます。

モコル トット ランラン
ハムキカ ネ ネ
ホッホーレンカ スイエ
アッホルー(rrrrrr...)ホッホヘ
アッホルー(rrrrrr...)ホッホヘ

 なんかの講習会で聞いて覚えたので細部は違ってるかもしれません。意味は「空からお乳が降りてくるよ」というような感じです。アッホルーのルーのところで舌を回して rrrrr... とやります。
 ネンコロロやオロロンバイのルーツが本当に聖徳太子の時代までさかのぼれるのだとしたら、蝦夷と呼ばれてた人たちはアイヌ語をしゃべってたそうですから、アイヌの trrrrr... ともつながってるといいなと妄想してみたり。

# 「太平楽の譜」というのが気になります。太平楽という雅楽がありますけど、あれのことでしょうか。それとも別のものかしら。太平楽と「ロロロ」の関係に心当たりのある方はおられませんか?
# 聖徳太子といえば仏教を大事にしたのでも有名です。そこで思いつくのは真言にコロコロという言葉がしばしば出てくるということです。有名どころでは薬師如来のオンコロコロセンダリマトウギソワカというやつ。意味は運べ運べ…いや、それはカラカラだったかしら(うろおぼえ)。センダリもマトウギも女神の名前だし、真言はゴロだけで大した意味のないものが多いです。連続して唱えることに意味があります。こういった真言のたぐいがいつごろ日本に入ってきたのかわからないので子守歌や聖徳太子といきなり結びつけるわけにもいきませんが、思いついたのでメモのみ。