ネタ袋

不思議なことや、勉強になりそうな事を書きとめておくブログで、かつては日常の記録としても使われていたことがありますが、これからは不思議な話等をごくごくたまーに更新するかもしれません。

マレーのサカイ族(ベルナール・ユーヴェルマンス「未知の動物を求めて」講談社)

 1953年のクリスマスの日。マレー半島のベラク州南部トロラクのゴム園でおこった事件である。16歳の中国人少女がゴムの木に穴をあけていると誰が肩にふれるので振り返った。そこのは長い黒髪を垂らした肌の白い猿のような女が立っていた。腕と腰に毛が生え、広い額もまた毛深く、口ひげがある。黄色い木の皮の腰巻きをつけているほかは全裸で、獣のようなニオイがしたという。女は鳥のようにガァガァ鳴きながら親しげに笑った。その口には長い牙があったという。女のほかに男がふたり離れた場所にいたが敵意はなさそうだった。少女はその場から走って逃げた。少女はこの翌日に3人が川で泳いでいるのを目撃している。この時はタミール人のゴム収集夫も一緒に見ており、男の野人は口ひげを腰まで垂らしていると証言している。
 ゴム園では野人を恐れて誰も働かなくなったので警察隊を呼んで警備させる事件に発展。マレー市軍の伍長ワハーブが3人の野人を目撃するが、サカイ族であろうと思い発砲しなかった。野人たちは鉄砲を恐れて逃げていった。野人たちは身長180cmで毛深く、頑丈な体つきをしているという。

 サカイ族はセノイ族とも呼ばれる。セノイはジャングルの人という意味。遊牧民で、木の皮のふんどしと、黒い繊維質のキノコの紐で縁取りした腰帯を身につけている。武器は吹き矢で、農具はとがった棒のみ。四角か円錐型の小舎をたてて村をつくり、悪魔をおそれ、神をあがめる。ペング、あるいはトワンという神、罪人の魂を熱湯で洗う女巨人ロングパアプス祖母神を崇拝する。

 また、マレーにはサカイと呼ばれる悪魔の伝説がある。右腕には刃のような骨があり木の伐採に用いる。てっぺんの果実を採集するために幹を登り、枝に座って小枝をその鋭い刃で払う。下に降りる時はその小枝と一緒に飛び降りるが怪我をすることはない。人々はハンツー・サカイ(悪魔のサカイ)と呼んで恐れている。

 『山海経』にも異民族を記録したと思われる部分がたくさんあるが、手足が長い、逆方向に曲がる、などの体の異常な特徴を記録したものも少なくない。民族固有の生活習慣を他の民族が見て想像を働かせた結果かもしれない。